「シーズンMVPとファイナルMVP、どっちが価値あると思いますか?」——バスケ好き同士だと、けっこう意見が割れるテーマです。82試合を通した評価か、最後の7試合で見せた輝きか。
先日歴代MVP最多受賞ランキングを整理したので、今回はその「ファイナル版」です。並べてみると顔ぶれがけっこう変わります。そして、この賞にはNBA全体でもかなり異質な記録がひとつ残っています。
2026年のファイナルMVPはジェイレン・ブランソン
まず最新の結果から。2026年NBAファイナルは、ニューヨーク・ニックスがサンアントニオ・スパーズを4勝1敗で下して53年ぶりの優勝。ファイナルMVPにはジェイレン・ブランソンが選ばれました。
胴上げとなった第5戦で挙げた45得点は、ファイナルの決着試合でのアウェイ得点としてマイケル・ジョーダンに並ぶ数字でした。最後の最後に自己最高の試合を持ってくるあたりが、いかにもファイナルMVPらしい獲り方です。
NBA歴代ファイナルMVP受賞回数ランキング【2回以上】
| 順位 | 選手 | 回数 | 受賞年(球団) |
|---|---|---|---|
| 1 | マイケル・ジョーダン | 6回 | 1991、1992、1993、1996、1997、1998(ブルズ) |
| 2 | レブロン・ジェームズ | 4回 | 2012、2013(ヒート)/2016(キャバリアーズ)/2020(レイカーズ) |
| 3 | マジック・ジョンソン | 3回 | 1980、1982、1987(レイカーズ) |
| 3 | シャキール・オニール | 3回 | 2000、2001、2002(レイカーズ) |
| 3 | ティム・ダンカン | 3回 | 1999、2003、2005(スパーズ) |
| 6 | ウィリス・リード | 2回 | 1970、1973(ニックス) |
| 6 | カリーム・アブドゥル=ジャバー | 2回 | 1971(バックス)/1985(レイカーズ) |
| 6 | ラリー・バード | 2回 | 1984、1986(セルティックス) |
| 6 | ハキーム・オラジュワン | 2回 | 1994、1995(ロケッツ) |
| 6 | コービー・ブライアント | 2回 | 2009、2010(レイカーズ) |
| 6 | カワイ・レナード | 2回 | 2014(スパーズ)/2019(ラプターズ) |
| 6 | ケビン・デュラント | 2回 | 2017、2018(ウォリアーズ) |
ジョーダンの6回は「出場したファイナル全部」
ジョーダンの6回が単独トップですが、この数字の本当に恐ろしいところは回数そのものではありません。ジョーダンがファイナルの舞台に立ったのは6回で、その6回すべてでファイナルMVPを受賞しているという点です。
ファイナルまで行けば優勝、優勝すればMVPは自分。6勝0敗で、しかも一度も他の選手に譲っていない。ピッペンやロッドマンという歴史的な脇役がいてなお、記者の票が一度も割れなかったわけです。ブルズが2度の3連覇を達成した時代を、数字の面から象徴している記録だと思います。
負けたチームから選ばれた、たった1人の男
この賞で一番語り継がれているのは、実は受賞回数の話ではありません。1969年、ジェリー・ウェストは「敗れたチームの選手」としてファイナルMVPに選ばれました。
レイカーズはセルティックスに第7戦で敗れています。それでもウェストのシリーズを通じた出来があまりに圧倒的で、優勝チームではなく彼に票が集まった。ファイナルMVPが創設された最初の年の出来事です。
そして57年経った今も、これに続いた選手は1人もいません。ウェスト自身はこの受賞をまったく喜んでいなかったと語っていますが、NBAロゴのモデルになった男が唯一持つ記録が「負けた側のMVP」というのは、なんとも彼らしい話です。
3球団でファイナルMVPを獲ったのはレブロンだけ
2位のレブロン・ジェームズは4回。内訳を見ると、ヒートで2回、キャバリアーズで1回、レイカーズで1回です。3つの異なる球団でファイナルMVPを受賞したのは、NBA史上レブロンただ1人です。
2球団で獲った選手もカリーム(バックス/レイカーズ)とカワイ・レナード(スパーズ/ラプターズ)の2人だけ。とくにカワイは、まったくカラーの違う2球団を短期間で頂点に導いています。移籍してもエースとして優勝させられる選手が、いかに少ないかという話でもあります。
シーズンMVPとの顔ぶれの違いが面白い
ここが個人的に一番おもしろかったポイントです。シーズンMVPの最多はカリームの6回ですが、彼のファイナルMVPは2回だけ。逆にシャキール・オニールはシーズンMVPが1回なのに、ファイナルMVPは3回です。
82試合を通した安定感で評価される賞と、7試合の勝負で決まる賞では、そもそも測っているものが違うということでしょう。両方を同じ年に獲るのがどれだけ難しいかは、得点王・MVP・ファイナルMVPの三冠の記事でも書いたとおりです。
スパーズ5回の優勝で、ファイナルMVPは3人
球団単位で見ると、サンアントニオ・スパーズが面白い例です。1999、2003、2005、2007、2014年と5回優勝していますが、ファイナルMVPはダンカンが3回、トニー・パーカーが1回、カワイ・レナードが1回と分散しています。
1人のスターに依存せず、時期ごとに主役を替えながら勝ち続けたポポビッチ体制の性格が、この分散にそのまま出ています。
まとめ
- 歴代最多はマイケル・ジョーダンの6回。出場したファイナル6回すべてで受賞
- 2位はレブロン・ジェームズの4回。3球団での受賞は史上唯一
- 3回はマジック、シャック、ダンカンの3人
- 1969年のジェリー・ウェストは、史上唯一「敗れたチーム」からの受賞者
- 2026年はジェイレン・ブランソン(ニックス)が受賞
ファイナルMVPは、その選手のキャリアを一発で説明してくれる肩書きです。何度優勝したかより、「あのシリーズで一番だった」という記録のほうが、後になって効いてくることも多い。リング獲得数のランキングとあわせて眺めると、それぞれの選手の勝ち方の違いが見えてきます。
賞ではなく数字で歴史に残るタイプの選手が気になる方は、歴代通算得点ランキングTOP20もどうぞ。ちなみにレブロンがファイナルMVPを4回獲れた背景には、23シーズンという異常な現役の長さもあります。長く一線にいれば、それだけファイナルに立つ回数も増えるという単純な話でもあるわけです。


