ふと気になったんですが、Gリーグって平均で何年くらい在籍する選手が多いんでしょうか。それに、NBA契約が取れなかったとき、そのままGリーグで粘るのと、ヨーロッパなど海外を経由するのとでは、どちらがNBAにたどり着く確率が高いんだろう、とも思っていました。「元Gリーガー」の選手は本当に多いですし、ヨーロッパから戻ってくる選手のニュースも毎年のように流れてくるので、前から引っかかっていたんです。先に言っておくと、後半の「どっちが高いか」は数字で答えを出せませんでした。ただ、実例からうっすら見えてきた傾向はあるので、そこまで含めて書いていきます。
平均在籍は2シーズン半?ただし出どころが分からない
まず在籍年数から。CBS Sportsの2025年7月31日付の記事(Isabel Gonzalez記者)に「Gリーグでの平均キャリアはわずか2シーズン半」という趣旨の一文があります。同じ文の中で、NBAで機会をつかむ前にGリーグを離れる大きな理由の一つとして、海外の方が大幅に稼げることが挙げられていました。
ただ、この2.5シーズンという数字は、記事の中で誰がどの範囲で計算したのかが示されていません。Gリーグ公式や独立した集計で裏が取れたわけではなく、「CBS Sportsの記事にはこう書いてある」というところまでしか言えないんです。2ウェイ契約、スタンダード契約、アフィリエイト選手といった契約区分ごとの平均在籍年数も探しましたが、確認できる資料は見つかりませんでした。なのでこの数字は、「短期間で去る選手が多いらしい」くらいの温度感で受け取っておくのがよさそうです。
半分以上がGリーグ経験者。でも割り算は危ない
在籍が短いといっても、Gリーグを経験した選手自体は多いです。同じCBSの記事では、選手会のJeff Aubry氏が「今のNBA選手の半数以上がGリーグ経験者」と話していて、これは各チーム3人いる2ウェイ選手や、Gリーグに配属される選手も含めた数え方だそうです。Gリーグ公式のFAQにも、2025-26シーズンの開幕ロスターの51%がGリーグ経験者で、これは過去最高タイの割合だと書かれています。半分がGリーグ経験者というのは、正直想像以上でした。
では、Gリーグからどれくらいの人がNBAに上がれるのか。公式のコールアップ一覧を見ると、2022-23シーズンが58件(49人)、2023-24が81件(67人)、2024-25が79件(67人)、2025-26は公式ページの表示(2026-09-19時点)で88件(76人)です。件数と人数が違うのは、同じ選手が複数回呼ばれるケースがあるからですね。
ここでつい「79件÷109人」みたいな割り算をしたくなるのですが、これは使えません。FAQに出てくる109人というのは、2024-25シーズンにNBA契約を持ったままGリーグ球団へ配属された選手で、延べ481回の配属があったという数字です。Gリーグ全体の選手数ではないので、母集団が違います。つまり「Gリーグ選手の何%がNBA契約を取れるのか」は、今回調べた範囲では信頼できるデータが見つかりませんでした。数字が揃っているようで、肝心なところだけ揃っていないんですよね…。
Gリーグで粘り続けた人たち
「粘る」側の代表例はAndre Ingramです。2007年にドラフト外で、そこから約10年間Gリーグでプレーを続け、Gリーグ通算の3ポイント成功数は歴代最多という記録も持っています。SIによると当時のGリーグでの年俸は1万9500〜2万6500ドル程度で、この金額で10年待ち続けるのは想像するだけで相当な覚悟です。そして32歳だった2017-18シーズンの終盤に、レイカーズが残り試合分の契約でNBAに昇格させました。映画みたいな話ですが、平均2シーズン半と言われる世界(出どころ不明の数字ではありますが)で約10年というのは、やはり例外中の例外だと思います。
David Stocktonも印象的です。John Stocktonの息子で、2014年のドラフト外から、リノ・ビッグホーンズやサウスベイ・レイカーズ、メンフィス・ハッスル、バレー・サンズなど複数のGリーグ球団を渡り歩きました。NBAでは2015年にキングス、2018年にジャズと短期の契約を結び、出場は通算6試合(キングス3、ジャズ3)です。しかも彼はGリーグに居続けたわけではなく、クロアチアやニュージーランド、ドイツ、プエルトリコなど海外も行き来しています。「Gリーグに残るか海外に出るか」の二択というより、Gリーグと海外を往復しながらチャンスを待つ道もあるんだな、というのがStocktonの経歴を見ての感想です。
2ウェイ契約のあと、ヨーロッパへ流れた例
逆に、2ウェイ契約を掴んだあとウェイブされてヨーロッパへ向かった例もあります。Armel Traoréは2024年のドラフト外で、7月にレイカーズと2ウェイ契約を結びましたが、2025年2月5日にウェイブされ、その約3週間後の2月25日にはスペインのバスケット・マンレサ(ACB)と契約しています。切り替えが早いですね。
Malcolm Cazalonは少し違います。2023年のドラフト外でピストンズと2ウェイ契約を結び、2024年2月21日にウェイブされましたが、そのまますぐヨーロッパへ戻ったわけではありません。2月24日にウェストチェスター・ニックス(ニックス傘下のGリーグ球団)に加入していて、フランスのSIGストラスブールと契約してヨーロッパに復帰したのは同年12月です。ウェイブから約10か月、その間はGリーグにいたわけで、Traoréのような「ウェイブされたらすぐ海外」とは少し違う流れなんですよね。
CBSの記事にあった「海外の方が稼げる」という話を思い出すと、Gリーグで待つのか、報酬の良い海外に行くのかは、選手にとってかなり現実的な生活の問題なんだろうなと思います。
ヨーロッパから「逆輸入」された3人
一方、ヨーロッパを経由してNBA契約を掴んだ選手たちを見てみると、ちょっと雰囲気が違います。
Vasilije Mićićは2020-21シーズンのユーロリーグMVPで、2023年7月1日にESPNが、サンダーと3年2350万ドルで合意したと報じました(正式契約は7月中旬)。NBAでは2シーズンで通算101試合に出場し、途中でホーネッツ、サンズへトレードされています。2025年7月にはハポエル・テルアビブと契約してヨーロッパに戻りました。
Aleksandar Vezenkovは2017年ドラフト2巡目全体57位でネッツに指名され、その後に権利がキャバリアーズを経てキングスへ渡った選手です。オリンピアコスで2022-23シーズンのユーロリーグMVPを獲得し、2023年7月にキングスと3年2000万ドルで正式契約しました。指名から6年越しのNBA入りというのが、なかなか感慨深いです。
そして最新の例がMario Hezonjaです。2015年ドラフト全体5位でマジックに指名され、NBA最後のシーズンは2019-20(ブレイザーズ)。その後はヨーロッパに渡り、直近4シーズンはレアル・マドリードで、2023-24シーズンにユーロリーグ優勝、2025-26シーズンはACBのMVPを獲得したと報じられています。
そのHezonjaについて、2026年7月26日にESPNが、キャバリアーズと1年契約で合意したと報じ、金額はESPNなどが280万ドル、Hoops Rumorsは285万ドルと伝えていて、細かい数字は報道で少し揺れています。正式契約とレアル・マドリード離脱の発表は7月31日で、約6シーズンぶりのNBA復帰です。ウォリアーズも獲得に興味を示していたと伝えられていて、ドラフト5位でNBA入りした選手が、ヨーロッパで評価を積み直して呼び戻される。この記事でいう「逆輸入」のイメージに、いちばん近い例かもしれません。
じゃあどっちが確率高いのか
結論から言うと、「Gリーグ経由の成功率」と「ヨーロッパ経由の成功率」を並べて比べたデータは、信頼できるものが見つかりませんでした。ここから先は統計ではなく、今回挙げた実例を並べて見えた傾向を、僕なりに整理しただけです。
Gリーグ経由は、低い年俸のままコールアップの機会を待ち続ける道でした。成功したIngramでも約10年かかっていますし、CazalonやTraoréのように、2ウェイ契約をウェイブされたあとヨーロッパへ向かう人もいます。ヨーロッパ経由の方は、今回見たMićić、Vezenkov、Hezonjaはいずれも、ユーロリーグMVP級の実績やドラフト上位指名歴のある「すでに評価が定まった選手」でした。無名の選手がヨーロッパから一発でNBA契約を掴むというより、ヨーロッパで結果を出した選手が“逆輸入”される道、という印象です。
もちろんこの整理には注意が必要です。目に入ってくるのは成功した例ばかりで、ヨーロッパやGリーグでNBA契約に届かなかった大勢の選手の姿はここに入っていません。それに、Stocktonのように両方を行き来する選手もいるので、そもそも二択ではないのかもしれません。
まとめ
「平均2シーズン半」はCBS Sportsの記事にある記述で、算出根拠が分からないので統計としては断定できません。コールアップは直近4シーズンで年58〜88件出ている一方、「何%が上がれるのか」も、Gリーグ経由とヨーロッパ経由の成功率比較も、データは見つかりませんでした。実例から見えたのは、Gリーグは低い年俸で待つ道、ヨーロッパは実績十分な選手が評価を積み直して戻る道、という性質の違いまでです。
調べる前は「結局どっちが確率高いんだろう」と単純に考えていたんですが、Ingramの約10年やHezonjaの約6年ぶりの復帰を見ていると、確率の話の前に、NBAのロスターに戻ってくるまでに選手が背負っている時間の長さに圧倒されました。来シーズンも、どんなルートで新しい顔がNBAに現れるのか楽しみにしています。


