サディック・ベイがニューオーリンズ・ペリカンズと3年5550万ドルの契約延長で合意しました。契約は完全保証で、さらにトレードされた場合には残り契約の最大15%が上乗せされるトレードキッカー付き。2029-30シーズンまでペリカンズに残る契約になります。3年5550万ドル、日本円にするとざっくり83億円規模ですが、今回のニュースで一番すごいのは金額ではないと思います。
ベイは2024年3月に左膝のACLを断裂し、その後2024-25シーズンを丸々欠場。それでも復帰した2025-26シーズンは72試合に出場し、平均17.7得点、5.6リバウンド、2.5アシストとキャリアハイ級のシーズンを送りました。1年全休から戻ってキャリアハイ、そのまま大型延長。普通にめちゃくちゃ綺麗な復活ストーリーです。
まず今回の契約内容
今回ベイが結んだのは3年5550万ドルの完全保証契約で、年平均にすると1850万ドル。さらに最大15%のトレードキッカーも付いています。ACL断裂歴のある選手なら、チームオプションや部分保証を入れてリスクを減らす方法もありますが、それでもペリカンズは3年間をしっかり保証しました。27歳という年齢を考えても、今から数年がまさに全盛期です。
完全保証というのは、それだけ球団が今後も計算できる戦力として見ているということです。昨季の数字だけではなく、72試合出場できたこと、シーズンを通して大きな離脱なく戦えたことまで含めて評価されたんだと思います。大怪我明けの選手にここまで保証するのは、ペリカンズ側にもかなり自信がある証拠です。
2年前はACL断裂
ここまで来るまでの流れはかなり大変でした。2024年3月、当時アトランタ・ホークスに所属していたベイはニューオーリンズ・ペリカンズ戦の第4Qに左膝を負傷し、その後の検査で左膝前十字靱帯の断裂が判明しました。当時は平均13.7得点、6.5リバウンドを記録しており、普通にローテーションの中心としてプレーしていた時期です。
そこから突然シーズン終了。さらに復帰には長いリハビリが必要になり、翌2024-25シーズンも1試合も出場できませんでした。NBA選手にとってACL断裂は今でもかなり重い怪我で、復帰できるかだけではなく、以前と同じ動きに戻れるかが大きな問題になります。特にウイングは走る、止まる、横に動く、ジャンプする、コンタクトを受けるといった動作が多く、膝への負担も大きいです。
ワシントンと契約したものの1年全休
ACL断裂後、ベイはワシントン・ウィザーズと契約しました。ただ、2024-25シーズンはリハビリに専念し、公式戦には1試合も出場できませんでした。普通に考えれば、ここで市場価値はかなり落ちます。1年以上試合に出ていない、大怪我明け、以前と同じ動きができる保証もないとなれば、チーム側が慎重になるのは当然です。
それでもベイにはNBAで使えるウイングとしての実績がありました。そして2025年夏、3チームトレードの一部としてニューオーリンズへ移籍します。ここから一気に流れが変わりました。
復帰1年目で72試合
2025-26シーズン、ベイは72試合に出場し、そのうち64試合に先発。平均31.2分プレーしました。これだけでもかなり大きいです。ACL断裂から戻った選手を見るとき、最初に気になるのはプレー内容より健康面で、ちゃんと試合に出られるのか、連戦に耐えられるのか、シーズンを通してコンディションを維持できるのかという部分です。
ベイは72試合出場し、ほぼ1シーズン戦い切りました。怪我から戻ったというだけではなく、主力として長い時間コートに立ち続けた。この実績が今回の契約で一番大きな材料だったんじゃないかなと思います。
しかもキャリアハイの17.7得点
さらに内容も良かった。平均17.7得点、5.6リバウンド、2.5アシスト、FG45.1%、3P36.7%、FT84.1%。得点はキャリアハイで、ACL断裂から復帰したシーズンに以前より数字を伸ばしてきました。
特にFG45.1%はキャリア平均を大きく上回っており、3Pも36%台まで戻しています。単純にシュート本数を増やして得点が上がっただけではなく、効率まで改善している。1年全休明けにこれなら、そりゃペリカンズも延長したくなります。
サディック・ベイって元々どんな選手?
ベイは2020年ドラフト全体19位で、ヴィラノバ大学出身の203cmのウイングです。NBA入り後はデトロイト・ピストンズでキャリアをスタートし、ルーキーイヤーから70試合に出場して平均12.2得点を記録。All-Rookie Teamにも選ばれました。
サイズがあり、3Pが打てて、リバウンドにも絡める。守備でもウイングを守れる。今のNBAでかなり使いやすいタイプです。スーパースターではありませんが、どのチームにいても役割を作りやすく、スターの横で仕事ができる選手です。
ピストンズ時代には50点超えも
ベイを昔から見ている人なら、ピストンズ時代の爆発力も覚えていると思います。2022年には50得点を超える試合もあり、シュートが入り始めると一気に点数を伸ばせるタイプでした。毎試合自分でオフェンスを作るエースではないですが、スポットアップから3Pを決め、サイズを生かしてドライブし、フリースローも取れる。
一方で安定感には波もあり、デトロイトからアトランタへ移籍。ホークスではロールプレイヤー寄りの役割になっていました。そこでACL断裂。キャリアの流れがかなり変わります。
怪我した相手がペリカンズだったのも不思議
2024年にACLを断裂した相手は、今所属しているペリカンズでした。その約1年半後、今度はそのペリカンズのユニフォームを着て復帰し、さらにチームの主力となって3年5550万ドルの契約まで手にしました。
NBAって本当に何が起きるか分かりません。怪我をしたときには、数年後に同じチームから大型契約をもらっているなんて想像できなかったと思います。
なぜニューオーリンズでハマったのか
ベイがペリカンズで数字を伸ばした理由の一つは、役割がかなり分かりやすかったことだと思います。ボールを独占する必要はなく、3Pを打つ、クローズアウトされたらドライブ、リバウンドへ行く、サイズを使って守る、オフボールで動く。こういう仕事に集中できます。
エースとして全てを任されるわけではない。でも相手も放置できない。3番手前後のスコアラーとして使えるタイプで、この立ち位置がかなり合っていたんだと思います。チームの中で自分の役割を絞れたことで、効率も上がったのかもしれません。
年平均1850万ドルは高いのか
3年5550万ドルなので、年平均は1850万ドルです。今のNBAのサラリー水準で考えると、スター級の金額ではありません。むしろ17.7得点、5.6リバウンド、3P36.7%、72試合出場の27歳ウイングと考えると、かなり現実的な金額です。
今後サラリーキャップが上がっていけば、契約後半はさらに割安に見える可能性もあります。スーパースターに5000万ドル、6000万ドル払う時代なので、その中で年1850万ドルで主力ウイングを確保できるなら、ペリカンズ側としても悪くない契約に見えます。
27歳というタイミングもいい
ベイは現在27歳で、この契約が終了するころでも30歳前後です。35歳まで抱えるような契約ではなく、今から一番良い数年間をそのまま押さえる形になります。ACL断裂のリスクはもちろんありますが、昨季72試合出場し、しかもキャリアハイを更新したことを考えると、3年間保証する判断もかなり理解できます。
チーム側から見ても、年齢、役割、契約額のバランスがいい。スーパースター契約のようにチーム全体の柔軟性を奪うほど高くなく、それでもローテーションの中心として使える。かなり扱いやすい契約です。
1年全休からここまで戻るのは簡単じゃない
ACL断裂から復帰した選手の記事を見ると、復帰したこと自体がゴールのように扱われることがあります。でも実際には、試合に戻ってからが大変です。スピードに慣れ、コンタクトに慣れ、膝への恐怖をなくし、自分の動きに自信を取り戻し、試合勘も戻さなければいけません。
それをやりながらNBAで結果まで出す必要があります。ベイは復帰1年目から72試合に出場し、キャリアハイの17.7得点。普通に成功例と言っていいと思います。
完全保証が復活の証明
今回の契約で個人的に一番印象的なのは完全保証という部分です。3年5550万ドル、全部保証。チームが本当に健康面を怖がっているなら、もっと逃げ道を作るはずですが、ペリカンズはそうしませんでした。
昨季のプレーを見て、今後も戦力として計算できると判断したということです。つまり今回の契約は、単に良いシーズンを送ったご褒美ではなく、ベイがNBAの主力として完全に戻ってきた証明でもあると思います。
NBAって夢あるなと思う
2年前はACL断裂。翌シーズンは出場0試合。そこから72試合に出場し、平均17.7得点。そして3年5550万ドル、日本円でざっくり83億円です。
こういうキャリアを見ると、NBAって厳しいけど夢もあるなと思います。怪我で一度止まっても、戻って結果を出せば評価は取り戻せる。むしろ以前より高い評価を得ることだってあります。
もちろん、ここまで戻るまでに本人がどれだけリハビリしたのかは外からでは分かりません。でも結果だけ見てもかなりすごいです。
サディック・ベイ、完全復活
大型契約というと、どうしても金額に目が行きます。でも今回のサディック・ベイは、金額以上にそこまでの過程が面白いです。ACL断裂、1年全休、新天地、72試合、キャリアハイ、完全保証の大型契約。全部つながっています。
27歳。まだここからです。昨季の17.7得点が一時的なものではなく、このままニューオーリンズで主力として定着できれば、今回の契約はペリカンズにとってもかなり良いものになるはずです。
個人的にはこういう復活劇、かなり好きです。1年丸ごと試合に出られなかった男が、そこから戻って3年83億円。サディック・ベイ、完全復活と言っていいんじゃないでしょうか。


